【書評/要約】建築を気持ちで考える 堀部安嗣

紹介文

建築家である堀部安嗣さんの印象に残った建築と自分の作品に対する思いが綴られた書籍です。前半では旅をする中で出会ってきた建築にどのように影響を受けてきたかが堀部自身のスケッチと主に書かれています。後半では自身の作品をどのような考えのもとに作ったかを見開き1ページほどの文章で説明し、その後図面とスケッチを掲載しています。

印象的な文

堀部さんの考え方を理解した上でその建築の図面やスケッチをみることでみる視野が広くなると思います。そのため、どの作品集にも通ずる読み方かもしれませんが、まず最初に図面だけをみて、その後文章を読み、再度図面をみるという読み方を特におすすめしたい書籍です。

個人的には堀部さん自身の作品に対する思いが綴られた2章私の試行錯誤の軌跡が特に面白かったので、そこから15文ほど抜粋しています。

本来の建築の役割を考える

竪穴式住居がそうであったように、人間の原初的な居場所は円が基本となっています。正多角形は円に近いので建物に包容力が感じられ、原初的な人の居場所を喚起させるように思います。

私は建築をつくる1番の目的は、人間の原初的な身体感覚にシンプルに応えることだと思っています。

記憶の継承

建築が人の記憶を継承するものになること。これも建築の大きな役割だと思います。

ではなにをもって継承するか。この土地にかつて建っていた別荘を訪れたり、建て主と対話を重ねたりして考えた末に、以前の家での身体の動き方や、風景に向き合ったときの距離の感覚、つまり以前の家で無意識に行なっていたことや、心の深層に刻まれていることを表現したいと思いました。

なんのために記憶を継承できる建物をつくるのか。最終的には、人がその人らしくいられる建物にするためです。

更地にずっと昔からあったかのように

更地に”すでにあるもの”の見つめて設計するということは、設計の自由を束縛し、創造の幅を狭めることではなく、むしろ設計の”確かさ”を生むために不可欠なもの、と捉える事ができます。

そのような考えで設計すると、新築もどこか改築に近い行為につながるような気がします。すでにあるものの存在と骨格を見つめ、その与えられたもののなかに新しい空間と生活の可能性を探ってゆくことになるからです。

つまり、”新築のようにはつくらない”ということです。しかし、故意に古臭くつくるわけでも、単なる郷愁でつくるわけでもありません。現代に求められる条件をしっかりと満たし、同時代的であるけれども歴史的な、風土的な文脈にもつながるデザインが必要なのです。

庭から生まれる建築の多様性

建物よりも庭のほうがむしろ自由度は高く、今後まだ見ぬ新しい庭のあり方が見えてくるかもしれませんし、建物以上に多くの可能性を秘めているように思うこともあります。

また、庭のあり方やイメージをまず考えて、その後に建物のプランを考えることも少なくありません。

私は建物だけを設計するのではなく、むしろ建物と道路や街との接点を設計することに興味があります。

「生と死」が共存する空間

設計の依頼を受ける際、海老塚さんといろいろな話をしたなかで私が特に共感したのは、寺には大きな役割がふたつあるという話でした。その役割のひとつは、死者を祀り、偲び、祈りを捧げる場所であること。もうひとつは、エンターテインメントの場所であること。寺は人の生と死、その両方受け入れる場所であるべきだ、という信条を海老塚さんはおもちでした。

設計に対する恐怖心、私はこれを悪いこととは思っていません。むしろ必要なこととさえ思っています。自分が謙虚になり、今までにない新たななにかを生み出そうという欲求が自ずと抑えられるからです。

私は設計のとき、自ら主題を探すことがほとんどありません。そういう方法論が抜け落ちているとも言えますが、新しい建築の物語を自分が紡ぎ出そうと思うことはなく、すでにある物語を引き継ぐことを好みます。

人と建築と場所のつながり

設計というと視覚的なことに捉われがちですが、建物が出来た後、実際に使う立場になると、動きやすさや音、匂い、触感、温熱環境といった目に見えないもののほうがずっと大切になります。

私は規模の大きな建物を設計することよりも、ある地域に小さな建物をいくつか設計し、それが点在することで線や面を形成してゆくことに、より興味をもっています。

病めるときもある。希望に満ち溢れて前向きなときもあれば、失意のなかにいるときもあるでしょう。住宅はそのような住まい手のさまざまな心身の状況を受け入れなければなりません。

私は形式やスタイル、素材で和”を表現するのではなく日本人の身体感覚に素直に呼応し、日本人のもつ記憶や遺伝が目覚めるような空間を追求すれば、自ずと日本を表現するとになると思っています。

感想

堀部安嗣さんといえば、私の中では優しさを備えた作品を作る方というイメージがありました。そしてなぜそのようなイメージを持たされるのかがわかったような気がしました。

本人も言っているようにあまり自分の作品の色というものを出そうとしない。敷地や依頼主の記憶など自分の外部にあるものから発せられるメッセージのようなものを忠実にすくい上げる。その繊細さがこのような、主張はしなく上品でありながら印象的な作品を作りあげているのだと思いました。

About the author

衣食住、旅人本に興味がある。アウトプットメインですが読んでいただければありがたいです。

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