この記事ではアアルト自邸についての情報をまとめた記事になります。
フィンランドのデザインやアアルトに興味がある人、ヘルシンキに観光に訪れようと思っている方には参考になる記事になっているかなと思いますので、よろしければご覧ください。
目次は以下のようになります。
目次
アアルト自邸概要

1934年、アルヴァ・アールトとその妻のアイノは、ヘルシンキの中心地から少し外れたところに当時はほとんど手が付けされていなかった土地を手に入れました。
そして、そこに自邸の設計を開始し、1936年8月に完成を迎えます。
この住宅の最大の特徴は、家族の住宅であると同時にオフィスでもあり、そして、その2つの機能が外観からもはっきりと見て取れるように設計されていることです。
オフィス棟の細長い塊は、白く塗られたらレンガ造りになっています。窓の位置には、やはり機能主義の特徴がはっきりと見て取れます。住宅棟の外装材は、細長く、黒い塗られた細長い木を並べたものになっています。
建物は陸屋根で、南向きの大きなテラスも特徴です。
アアルト自邸には、すでにロマン機能主義の代表とされる「新しい」アールトの兆しがあります。
仕上げ材に木をふんだんに使っているところからも当時の建築家とのテイストの違いが見て取れます。
つまり、一言で言えば、アアルト自邸は、2人の建築家が自分たちのために設計した、シンプルですっきりした素材を使った、居心地のよい、日常生活をする場所であると同時に、親密な仕事を行うのための空間となっているなのです。
では、次にもう少し具体的な設計の手法を写真をガイドさんのお話を参考に見ていきたいと思います。
窓の計画
まず、お話して下さったのは窓の計画からでした。
アアルトは窓の計画においてプライベートを大切にしながら、光を上手に扱うことも考えていました。
を見て貰えばわかりやすいかなと思いますが、具体的には建物の公道にに面する部分には極端に窓の数が少ないことが見て取れます。

上の写真は公道からの建物の様子ですが、窓が1つしかなく、建物右側の黒の部分は外壁で囲まれています。

上の写真は外壁の内側からとった写真です。ここにおいても窓は1つしかありません。

公道側の模型
俯瞰して見ると上の写真のようになり、公道、入り口側は窓が2つしかないのがわかるかと思います。
続いて、入り口を抜け、リビングを見てもらいたいと思います。

リビングの南側、入り口と反対方法側にはこれでもかというほど大きな窓が連続して並べられており、非常に開放的な空間になっています。
このコントラストが非常に極端であることがまず、アアルト建築の1つの大きな特徴と言えるかなとお思います。

冬場、光の乏しいフィンランドではこのような大きな窓のあるリビングは非常に重宝されたのではないかと推測できます。
家具から見るアアルトの思想の移り変わり
続いて、興味深い解説だなと思ったリビングに置かれていたアアルトの家具の解説からアアルトのデザイン思想を見ていきましょう。
まずはアアルトが1930年代にデザインした家具を見てもらいます。

木や自然の素材でのデザインが特徴的なアアルト家具のイメージとはかけ離れているから鉄の家具にはびっくりされた方も多いのではないかと思います。
続いて、1940年代にデザインされたアアルト家具を見ていきます。

曲げ木のシンプルなデザインでこれぞアアルトの家具デザインといった家具かなと思います。
彼にとってこの10年間が非常に大切だったようで、具体的は曲げ合板の技術に関する研究、実験をこの10年間に行っていたようです。
リビングダイニングには曲げ合板の研究を実験素材が展示されています。

現地では冷たいイメージを持つメタルとプラスチックが嫌いだったからこそ、どうにかしてユニークなデザインを自然素材でできないかと考えた結果を表れているといった解説がされていました。
この自らの体で経験をしながら考えるという思考がアアルトの自然素材を大切にする思想につながっていったのかもしれませんね。
因みにご存知の方も多いかと思いますが、このような実地での学びを大切にしていたアアルトは彼の出生地であるユバスキュラの近くに実験住宅というなの別荘を建てています。
そこでの記事も挙げていますので、よろしければこちらご覧ください。
では、続いてリビング、ダイニングに置かれている他のものも見ていきます。
豊かなリビング、ダイニングの小物たち
コルビジェの絵画
玄関をリビングの間の入り口にはコルビジェの絵画がおいてあります。

モジュロール理論を示す人形とともに描かれてた抽象画はまさに機能主義でもあるこの家の雰囲気にあっています。
ダイニングテーブル、チェア
続いて紹介するのは、新婚旅行の際のイタリアで買ったダイニングテーブル、チェアです。

こういったものまで、長く愛して使えるところからもアアルトの家具への愛情が窺えるかもしれません。
食器棚

最後に因みに写真に収めるのを忘れてしまったのですが、このダイニングテーブル、チェアの横には大きな食器棚があり、その食器棚はアイノ、アアルト設計のものになっています。
この食器棚の特徴は両側に引き戸が取り付けされており、ダイニング側からもキッチン側からも食器が取れるようになっていることです。
ぜひ、訪れた際にはチェックしてみてください!
では、続いてリビングの隣、アトリエをみていきましょう!
日本人なら見逃すな!素敵な引き戸
アトリエに向かうその前に、注目して欲しいのはリビングとアトリエの間の引き戸。
この引き戸は日本建築からインスパイアされたものだそうで、日本人なら見逃せないものになっています。

オフィス概要
オフィスの内観は下の写真のようになっています。

大きさはそこまで大きくなく、多くても10数人が作業できるほどのスペースになっています。
自邸を建てた当時はこの大きさのオフィスで問題なかったようですが、アアルトが有名になるにつれて、所員が20人、30人と増えていき、立ち行かなくなり、そこで自邸の近くにアトリエを設計したようです。
このアトリエも素敵な建築でその訪問の様子もこちらにまとめていますので、よろしければご覧ください。

現在、オフィスには模型と当時の図面が展示されています。
上の写真の奥に見えるのは小さな図書スペースです。
この図書スペースは中2階、スキップフロアになっており、1階と2階を緩やかにつなげています。
では、次に2階に登っていきましょう!
2階

アアルト自邸の2階は1階のそれに比べとてもプライベートなものになっています。
平面計画的には中心に小規模のリビングスペースのようなものがあり、それを囲むように個々の部屋が続きます。
それぞれの部屋を写真を通して見ていきましょう。
主寝室
まずは主寝室をみていきます。

ここはアルバ・アアルトとアイノ・アアルト夫婦が過ごした寝室で、大きさとしてはそこまで大きくはないものの多くの見所があります。
まず、その1つが家具です。

これらの籐でできた家具はアイノ・アアルトの設計で、フィンランドの職人によって作られたものだそうです。
自然材料でありながら、野暮たさを感じさせないシンプルなデザインはアルバ・アアルトのデザインと共通するところがあると思いました。
続いて紹介するのは主寝室の奥にあるウオーキングクローゼット
特徴は光の入り方です。

この天井は円形の天窓になっており、この円形の天窓は今後のアアルト設計の建築にも度々使用されます。
恐らく、こういったところで、実験を重ねながら設計の練度を挙げていったのかなー、なんてことを想像しました。

子供の部屋1
その主な寝室の隣には子供部屋が続きます。
これまた小さいけど豊かな空間になっています。
子供部屋2、後に後妻の部屋

子供部屋は2つあります。この部屋はその後、アルヴァ・アアルトが最初の妻を失った後に再婚した2人目の妻エリッサ・アアルトの部屋となります。
現存している部屋の様子もエリッサ・アアルトのもので、部屋の中にある証明は彼女が設計したものが使われています。
浴室

浴室には底の深い特徴的なシンクが使われており、これはアアルトの代表作、パイミオのサナトリウムで使用されたもののようです。
最後に
以上、アアルト自邸を現地の解説を参考にしながら、みていきました。
個人的な感想を言えば、所々でいっていたのですが、フィンランドを代表とする建築にもかかわらず、それぞれの部屋はそこまで大きくなく、建物全体としてもいわゆる豪邸という感じではありません。

しかしながら、その空間自体は非常に豊かなものになっており、成金的なだだっ広い大豪邸とは対照をなす建築だなというイメージでした。
以上で私からの現地レポは終了になります。
さらに詳細な図面や解説、アアルトの基礎情報が必要だよという方はこれら本なども参考にしてみてください。