アアルトのスタジオ(アトリエ)の現地解説で学んだことまとめ

この記事ではアルヴァ•アアルト設計のアトリエを現地の写真付きで解説したいと思います。

これからヘルシンキに訪れる予定のあり基礎知識を入れておきたい方、ご時世的にフィンランドには行けないけどアアルト建築に興味のある方などには面白い記事になっていると思いますので、是非ご覧に下さい。

目次は以下のようになっています。

概要

アルヴァ・アールトは、1955年に自身の事務所として自邸から徒歩6分のところにこの建物を設計しました。元々、自邸にスタジオのスペースはあったのですが、大きな依頼が相次いだため、オフィスにはより広いスペースが必要になりこの建築を設計しました。

大きな特徴を簡単に述べると、中庭の円形劇場のような形の庭を白レンガの壁のが囲むような平面計画になっています。

そして、その白レンガの壁の内側には食事どころ、受付、所員のスペース、そしてアアルトのアトリエスペースがあります。

では、それぞれの空間の解説に移ります。

外観

まずは外観からアアルトの設計思想を見ていきます。

中庭

概要で中庭の円形劇場のような形の庭を白レンガの壁のが囲むような平面計画になっていると述べましたので、まずその中庭から見ていきましょう。

この円形劇場の中には多く機能を持つ空間です。

メインとしては所員が仕事の休憩中にリラックスするスペースだったようです。

他にもあるときにはこの場所が講演会をするための場になったりと、コミュニティの場として機能していたようです。

外壁から見る設計術

アアルトの私的な建築を語る上でプライベートとパブリックの理解は欠かせません。

具体的には公道側の外壁には窓がほとんどなく、一方で中庭側の外壁にはこれでもかというほど窓が取り付けられています。

通路側の壁:窓がほとんどない
中庭側の壁、窓が多く取り付けられている

このようにプライベートとパブリックを明確に分ける手法は自邸のデザインの際にも使われていますし、後の多くの建築家にも大きな影響を与えたのではないかと推測します。

では、次に建築の中に入っていきましょう!

一階

まずは一階のデザインから見ていきましょう

食事どころ

まずは1階にある食事どころを見ていきます。

アアルトはこの空間のことをタベルナと呼びました。

イタリア語で小さなレストラン、もしくはバーという意味だそうです。

日本語だと「食べるな」という発音がレストランという意味になるのはとても面白い現象だなーなんて事を思いました。

アアルトはイタリアのカルチャーがとても好きでその影響は建築に及んでいるところもしばしば見られます。

そして、その影響は性格も現れ、アアルトは非常に社交的な性格であったと言われています。

この空間の平面は三角形になっており、アアルトはその1つの頂点にあるテーブルに好んで座ったそうです。

写真1番奥の席がアアルトお気に入りのテーブル

理由としては、そこに座ることでみんなを見渡すことができるからだと言われています。

ここで所員との議論や会話を楽しんだのでしょう。

因みにこのスペースは後に増築されたスペースになっています。

元々は入り口付近の場所が食堂、タベルナのような役割を果たしていましたが、所員がさらに多くになるにつれ、大きな食堂も必要となったことでこの場所を作ったようです。

キッチンにも仕掛けがあり、両側から開けることのできる棚はアイノ・アアルトのデザインでアアルト自邸でもこのデザインを見ることができます。

では、続いて元の食堂スペースに移動しましょう。

元食堂スペース・受付

現在、アアルト関連の書籍やグッツが販売されているこの空間も元々は所員たちの食堂でした。

その他1階の空間は現在は受付として改築されています。

ここでの注目ポイントは光のメリハリです。

アアルトは事務所において大切な空間は仕事をするスペースだと考えていました。

そのため、今までに紹介した1階の空間はどちらかというと暗めのテイストでできています。

ただ、薄暗いといったような嫌なイメージにならないように照明などには注意が施されています。

食堂にある特徴的な照明たち

では、次にそのメインの空間、仕事場に向います。

2階

2階は主に仕事の空間となっています。

面積の約半分が所員の空間、そして半分がアアルト自身の空間となっています。

まず、所員の方々の空間から見ていきましょう。

贅沢な仕事空間

先ほども述べましたが、アアルトは事務所において大切な空間は仕事をするスペースだと考えていたため、事務所スペースは太陽光で満ち溢れる素敵な空間になっています。

この長方形に見える空間もよく平面計画を見ると台形のような形にわずかに傾いています。

この操作をすることによって、より奥行きがあるように印象づけることができます。

実際、この空間はとても広く感じました。

また、アアルトが気を使ったのが、窓の位置です。

たくさんの日の光を取り入れるために多く窓をつけたいと考えながらも、同時に所員が集中できるように人の視線が気にならない空間にしたいと考えていたアアルト。

そこで彼は人の視線よりも高い位置に水平連続窓を取り付けることで、この一見矛盾するような問題を解決しました。

この事務員のスペースには現在、建築模型をはじめ様々なものが展示されています。

少しだけ紹介しますと、まずはこのレンガ

ユニークな形をしていますが、これはアアルトが度々使用する曲面壁に使用されたものだそう。

次にこちら、様々なタイプのタイルが展示されており、これもアアルト建築の重要なエレメントになっています。

このように、机上の理論だけでなく、実践をいかに大切にしていたかが、この展示から伺えます。

ミーティングルーム

所員の部屋に付随されているのが、ミーティングルーム、現在はアアルト関連の展示を行うスペースになっています。

このミーティングルームの素晴らしいところがプレゼンテーションボードを置くスペースが自然光によって照らされているところです。

自然のプレゼンテーションライトといって良いと思います。

外観から見るとその天窓が形態のアクセントになっています。

機能と形態のユニークさを組み合わせたとても面白いアイディアだなと思いました。

因みにその横には図面を保存していたであろう箱がこれでもかと詰められています。

ここからもアアルトが以下に多くのプロシェクトを持っていたのかが理解できます。

では、最後にメインの空間アアルトの仕事部屋を見ていきましょう!

アアルトの仕事部屋

形態的に最もユニークなのがこのアアルトの仕事部屋。

ここはとても広く作られており、ここだけで自邸のリビングよりも広いのではと思うほど。

いかにアアルトが仕事へ情熱をかけていたのかがわかります。

奥に行くにつれ空間が高くなっており、最も奥の空間には様々なアアルト夫妻設計の照明が展示されています。

これは事務所の当時からあったもので、若い所員たちはここで、どの照明にしたらどんな空間になるのかを学んだそうです。

照明の奥には扉があり、ここはアアルト専用の扉だったそう。

しかし、扉の外側は傾斜のある地面で晩年のアアルトには使いにくく、この扉はあまり使われなかったそうです。

その他の展示物としてはユニークな断熱材も展示してありました。

ガイドさんに伺ったところTojalevy、Toja board、Tojaという材料を使った断熱材ということのようですが、ではTojaが一体なんなのかはガイドさんも知らないようでした。フィンランド語に詳しい方でもし、ご存知の方いましたら、下のコメント欄に書き込んでもらえればとても嬉しいです。

っl

最後に

以上がアアルトのスタジオ、アトリエの説明になります。


仕事場とそうでない空間に明確に主従関係をつけて平面計画や光のデザインを行っていることでアアルトの仕事、建築に対する向き合い方がその空間を通じて理解できたような気がしました。

こんな仕事環境で働けたら、良いアイディアも沢山浮かんできそうだなーなんて思える空間です笑

機会があれば、皆さんも是非訪れてみてください!

もし、より詳細で正確な情報が欲しいよという方は以下のの書籍もおすすめですので、さらに詳細な図面や解説、アアルトの基礎情報が必要だよという方はこれら本なども参考にしてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

About the author

衣食住、旅人本に興味がある。アウトプットメインですが読んでいただければありがたいです。

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